対談コラム TONOSESSION
第一回 米倉誠一郎 氏 × 殿内崇生

米倉誠一郎氏
略歴:1953年東京生まれ。 一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(PhD.)。1995年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。2012年~2014年はプレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。
現在、一橋大学の他に、Japan-Somaliland Open University 学長も務める。また、2001年より『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼任し、六本木ヒルズにおける日本元気塾塾長も務める。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。 著書は、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』、『脱カリスマ時代のリーダー論』『経営革命の構造』、『2枚目の名刺:未来をつくる働き方』、『オープンイノベーションのマネジメント』など多数。
殿内理事長
横浜青年会議所の2016年度の運営テーマを「創発」としました。私にとって創発とは個と個の力を組み合わせることによって
想像以上のパワーを創出することであり、様々な事柄を掛け合わせて行きたいとの思いを込めました。先生にとって創発とは?
確か2011年位から使われ始めましたね?
米倉先生
「創発」とは複雑性科学の分野で、複雑性科学とはそれは何か訳の分からない事を調べる分野で、「雲は何でできるのか」
「雪の結晶は5角形なのか」「粘菌みたいに中身が無いのに活動しているのか」など、そして都市も一緒で計画主体で形成されるのではなく、
個々の小さな動きが、全体として調和していく、又は大きな力を発揮すると考えている。
そんなことを考えていた時にアラブの春がおきて、30年間も独裁で国を治めていたカダフィ政権がいとも簡単に倒れた。
きっかけはツイッターでこれはおかしいと誰かが言い始めて、それをシェアして、みんな集まってくる。
最初無力だと思っていた我々でも小さなコールをつぶやきあっていたら、大きな力に変わるのだということを僕は本に書いた。
そういった意味で創発は力があったのだけれども、アラブの春の結果、生活がガタガタになったと言っている人たちがいるのも現実。
一方、チュニジアのカルデットがノーベル平和賞を受賞した。チュニジアが民主化に成功したのは、軍の介入等ではなく、弁護士だとか
そういう人達が話し合った結果だった。
僕は朝のBSをよく見るのだけれども見ていると、戦闘シーンから始まらない日はないくらいだよね。
戦争、テロから始まり温暖化、原発再稼働、問題があるのにインドに原発を売りに行こうとか、なにかもうお手上げの状態に
なっているのだという気持ちになっている。でもそんな中で誰かが何かをしないと何も始まらない。
殿内理事長
「創発的破壊」という概念が世界を変えたと私は解釈していますが、これからの日本に求められることはどんなことだと考えますか?
米倉先生
「創発的破壊」は起こし得る。それは事実だ。そこからの「創発的創造」には国の民度とか志が関係してくると考えている。
「創発的創造」は、知的レベルというかその国のレベルになると思う。
日本は戦争をしない国だから素晴らしい。 ミンダナオ島はつい最近まで戦争をしていたが、数か国の停戦監視員がいて、
ほとんどの国が軍服を着て武装監視しているが、日本の監視委員だけはポロシャツで丸腰なんだ。 丸腰って凄味があるんだよね。
スウェーデンは第二次世界大戦後、ナチスの過去から難民を受け入れるという方針でどんどん難民を入れる。
ただ理想と現実の間にはたたかいがあって、難民を受け入れていくと税金がかかる。
スウェーデンはこれ以上難民をうけいれると、収入の7割を国に税金を持って行かれることになる。
もう難民を受け入れられないとなったとき、スウェーデンの副首相は泣いたんだよね。
でも頑張っているんだよね。
一人ひとりが自分を高め、世界に出ていって日本には何が求められているのかを知るということがとにかく大事だ。
殿内理事長
少子化や人口減少など問題があるので、ビジネスの観点からも移民政策等には向き合う必要は感じています。
移民や難民を受け入れるとなると、一方で治安はどうなるのだとか言った議論になりがちですね。
いずれにしても大きな判断には勇気が必要ですね。
米倉先生
勇気というのは価値の基軸からしか生まれない。
例えば、ホンダは最期難しい決断をするときは「おやじならどうするだろう」と社員が考えるいうのがあって、
つまり本田宗一郎ならどう決断するのかという基軸で考えるわけだ。
日本ならどうか? 日本の価値観だったらどう判断するか?
「破壊」から「創造」につながるには自分たちの明確な基軸があるべきだよね。
殿内理事長
私たちは本業を持ちながら二枚目の名刺を持ってJC活動をしています。
我々が地域に果たすべき役割や今後の「地域」の在り方についての見解を教えて下さい。
米倉先生
まず僕の考えはシンプルで、日本はカルフォルニアより小さいのに、47都道府県があって、
例えば東京都には23区の行政区があって、その中でそれなりの金額の給料の議員や職員が沢山いる。
日本という国を統治するのに本当にそんなボリュームが必要なのかということ。
ニュージーランドは給料なしで議員をやっている。仕事が終わって20時から議会をする。
そういう風にするのもいい。道州制についてはそういった文脈で考えることがシンプルだ。
例えば町が汚いというなら、まずとにかく自分の家の前をきれいにするところから始めれば良い。
いま公園が汚いと、まず市に電話する。そして市が公園をきれいにする。
これにはすごいコストがかかる。 大事なのは公園がなぜ汚いのかということ。
自殺率は日本は9位だよ。なんで日本がここに入っているのか? 格差はその他の国と比べてそこまでない。
何故か? 選択の幅が狭いのだろうね。 一度ドロップアウトすると元に戻って来ることが難しい。
自殺の要因の一つにコミュニティの分断があるのだと思う。
むかしは隣近所に醤油を借りに行っていたけど、最近はないよね。
会社やコミュニティに関わらないと何をして良いか分からなくなる。
小さい時から関わると、会社でもそうだけれども、言われてやるのと、何かの為にやるのとでは全然意味が違う。
自分の可能性にチャレンジできるというのが大切だ。
日本はもう一度どういう国になりたいのか、地域は地域としてどういう地域を目指すのかを全員で考える必要がある。
そういった観点から、青年会議所の活動には地域に根差して取り組むべきことが本当に沢山あると思うし、
殿内君の二枚目の名刺も効果を発揮できると思いますよ。
殿内理事長
「創発」を通して明るい豊かな横浜の実現に向けて様々な訴求力を発揮していくことを使命として、
個々を高めあらゆる事象に向き合って参ります。
本日はありがとうございました。
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対談後記
最初のTONOSESSIONでは、一橋大学の米倉誠一郎先生にお会いさせて頂いた。
バブル崩壊後の「失われた10年」と言われた2000年頃、日本経済は不況の中にあった。その時代に新たな変化を起こすために経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターの中心的理論である「イノベーション」や企業が続いていく為には変化をしていく必要があると叫ばれ始めた中「創造的破壊」という言葉が、頻繁にマスコミ等で取り上げ始めたと記憶している。当時、学生であった私は、米倉先生の本を本屋さんで見つけ、難しい内容だなと感じていたものの社会人となり社会経験をしていく中で米倉先生が取り上げる企業や団体の実例がとても分かりやすく取り上げられているという事を知り、2010年~2011年にかけて米倉先生が主催している日本元気塾に入塾させて頂き、学びの機会を得た。
東日本大震災後すぐに発売された「創発的破壊」という本に出会い、大きな衝撃を受け、「創発」的概念は、今を生きる青年世代に取って仕事や青年会議所活動の上で役立つ考え方であり、2016年度横浜青年会議所の運営テーマを「創発」とさせて頂いた。2010年代の横浜青年会議所は「共感」という運動指針の下、活動を行っている。「創発」が起きる為には、「個と個の組み合わせ・掛け合わせがない事には生まれないもの」であり、まさしく「共感」するからこそ「創発」は起きるものであると私は考えている。
殿内崇生





